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ヒト・ストレス応答MAPキナーゼ経路の活性制御機構を解明するため、まずモデル生物である出芽酵母を用いて研究を開始し、酵母のストレス応答MAPK経路を制御する新しい2つのMAPKKK分子(Ssk2/Ssk22)、および浸透圧ストレス・センサーを同定した(Science, 1995)。

【いまさら聞けないがんの基礎 5】Wnt/β-カテニン シグナル伝達経路とは?

Drosophila(ショウジョウバエ)遺伝子wingless(wg)は、哺乳類のint1遺伝子のオルソログで、マウスにおいて乳がんを誘発する発がん性レトロウイルスであるマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)の挿入部位として最初に同定されました。がん原遺伝子のwgおよびint1は、進化的に保存された、無脊椎動物および脊椎動物の初期胚発生に必要とされるWntファミリーのシグナル伝達タンパク質メンバーをコードします(図5.1) *1–3 。中枢神経系、神経堤、および四肢の発生はWnt経路によって制御される正常なプロセスの例であり、Wnt遺伝子の機能を変化させる変異は先天性異常に関連します * 3–5 。分泌性糖タンパク質のWntファミリーのメンバーは、シグナル伝達イベントの引き金となり、成人組織の恒常性維持に不可欠で、細胞の増殖、分化、および遊走に関連します *6,7 。
Wnt遺伝子は、マウスおよびヒトにおいて19種類のアイソフォームが知られていますが、いくつかのファミリーメンバーの機能を変化させる遺伝子変異に関連する医学的病状を表5.1に示します *8 。

Winglessの表現型 Wntシグナル伝達不全に関連する医学的症状

Wnt/β-カテニン経路

シグナル伝達カスケード

Wntシグナル伝達経路には、古典的経路と非古典的経路が存在します(図5.2) *7 。 それぞれのWntシグナル伝達カスケードは、細胞外Wntタンパク質リガンド̶および関連共役受容体(LPR5,6)̶が細胞膜上の7回膜貫通型Frizzled(FZD)受容体に結合すると開始されます(図5.3)。それに続き、膜近傍の細胞質タンパク質Dishevelled(Dvl/Dsh)を介して、Wntシグナルカスケードの下流メディエーターにシグナルが伝達されます *9 。
Dvlシグナルは、RhoAおよびROCKなどの細胞質タンパク質を介して、平面内細胞極性(PCP)に伝播します。これは組織の平面における細胞の空間的構成を生じさせるプロセスです。PCPにおける混乱は、秩序が乱れた組織構造を引き起こし、脊椎動物では、神経管欠損および多発性嚢胞腎疾患の発症などの幅広い異常状態に関連します *5 。Dvlもまた、細胞遊走の正の制御因子です。Wnt/β-カテニン経路の制御は複雑で、複数のサイトゾルタンパク質と相互作用する足場タンパク質として機能するDvlを必要とします。
これらのタンパク質は、β-カテニンの正および負の制御因子として機能する、複数の標的遺伝子(その一部はアポトーシスや細胞増殖に関与)の転写を制御する多機能タンパク質です *10 。 Dvlは、足場タンパク質としての役割を果たす他に、細胞膜において、細胞内カルシウムやカルシニューリンなどのタンパク質とともにシグナル伝達イベントに関わることによって、細胞運命の決定および遊走に必要とされる活動も促進します *7 。
歴史的に、Wnt/β-カテニン経路は、古典的Wnt経路と考えられており、その混乱はがんを含むさまざまな疾患の発症に寄与することが知られています。非古典的Wnt経路̶ PCPシグナル伝達経路およびWnt/Ca2+シグナル伝達経路̶は、生物学的状況によって、β-カテニン非依存的あるいはWnt/β-カテニンシグナル伝達に拮抗して機能すると考えられています。Wnt経路と、増殖因子やサイトカインシグナル伝達経路を調節するような他のシグナル伝達ノード間で高レベルのクロストークが生じていることについては複数のエビデンスが存在します。個々のWntシグナル伝達を活性化するのに必要とされる特別な機構を解明することを目的とした研究が進められています *7,11 。

Wnt経路のシグナル伝達の多様性

Frizzled受容体

クラスFZD受容体は、Gタンパク質共役受容体の古典的クラスA,B, Cファミリーと関連しています。FZD受容体はWntシグナル伝達に不可欠であることが知られていますが、Wnt–FZD活性化の基本的メカニズムについては明らかにされていません。リガンドの選択性については情報が不足しており、どのようなWnt–FZDの組み合わせによる様式で特異的かつ協調的にWntネットワークの分岐経路における下流イベントに働いているかについてはよく理解されていません *14 。
Frizzledファミリーの受容体および他のWnt経路エフェクタータンパク質を検出するための一次抗体および二次抗体ならびにイムノアッセイに関する詳しい情報はこちらをご覧ください。

Frizzledタンパク質の模式図 FZD1/Fr izzl ed 1 Rabbit Polyclonal Antibody

Dishevelled
Drosophilaを用いた遺伝子実験において、DvlのホモログであるDshは、体および翅毛の方向を維持する役割を持つことが明らかにされました。マウスおよびヒトにおいては、Dvlのアイソフォームが3種類 (DVL1、2および3)存在することが知られています。Dvlタンパク質は、約750アミノ酸から構成され、3分の1のタンパク質ドメイン―N末端のDvl–AXIN(DIX)ドメイン、中央のPDZドメイン、およびC末端のDvl–Egl-10–プレクストリン(DEP)ドメイン―が保存されており、広範な細胞質タンパク質と相互作用します。Dvlは、Wntシグナル伝達経路の正の制御因子および負の制御因子に結合する他に多様なタンパク質アレイと相互作用します(表5.2) *9 。
Wntシグナル伝達経路において、Dvlは重合し、Wnt/FZD/LRP5/6シグナロソームのマルチユニットタンパク質クラスターと連携して下流エフェクターへのシグナル伝達を促進します。膜近位の足場タンパク質としての役割に加え、Dsh/Dvlには核輸送配列および核移行配列が含まれ、核における転写機能を媒介している可能性についても研究において示されています *9 。
DVLタンパク質を検出するための一次抗体および二次抗体に関する詳しい情報はこちらをご覧ください。

代表的なDvl-相互作用タンパク質 DVL1 Rabbit Pol yclonal Antibody

Wnt/β-カテニン活性化機構

Wnt/β-カテニン経路の制御機構は非常に複雑です。β-カテニンは、Drosophila(ショウジョウバエ)属で最初に発見された、一連の核となる発生関連シグナル伝達タンパク質の一部です *15,16 。カテニン(α、β、およびγ)は、Ca2+-依存性細胞間接着を媒介するE-カドヘリンが関与する細胞質タンパク質を遍在的に発現します。カドヘリンタンパク質は、細胞増殖および細胞間接着の制御による上皮細胞層の形成および維持に必要な接着結合の形成に部分的に必要とされます。β-カテニン̶Drosophila アルマジロの哺乳類ホモログ̶はまた、アクチン骨格を繋留し、上皮シートが完成した際に細胞の分化を停止させる接触阻止シグナルを伝達していると考えられます。β-カテニンは、E-カドヘリンとの相互作用の他に、N-カドヘリン、α-カテニンおよび腫瘍抑制因子遺伝子産物APC(大腸腺腫症)などのいくつかの他のタンパク質にも関与しています *17 。古典的Wnt/β- カテニン経路がオン状態において、β-カテニンは、複数のサイトゾルタンパク質と複合体を形成します(図5.4) *15 。

オフ状態では、細胞質および核のβ-カテニンのレベルは低く、細胞外Wntの分泌型Frizzled関連タンパク質(sFRP)およびDickkopf(DKK)タンパク質への結合によって、この経路の活性化が妨げられます。Wntリガンドの存在比がFRPやDKKタンパク質などの阻害剤の存在比を上回ると、Wnt/β-カテニンの活性化が生じます。WntがLRP5/6に結合するとともに、FZD受容体を占拠すると、Dvlタンパク質の動員が誘導されます。これらのイベントに続いて、AXINおよび分解複合体が細胞膜に動員され、そこで、AXINの分解およびGSK-3βの阻害がともにサイトゾルβ-カテニン濃度の上昇に寄与します。β-カテニンの蓄積およびその核内移行は、標的遺伝子の転写に必要とされる、DNAに結合するTCF/LEFファミリーメンバーとの相互作用を促進します(図5.5)。β-カテニンの標的遺伝子は、多種多様な細胞タイプおよび組織を制御します。TCF/LEFアイソフォームを選択することによって制御される標的遺伝子の代表例を表 5.3に示します *15 。

Wnt/β-カテニン制御に関連するタンパク質

APCは、Wnt経路シグナル伝達の重要な制御因子で、conductinを含む構造成分の細胞間結合に関与し、β-およびγ-カテニンの特定の内部領域への結合においてE-カドヘリンと競合します。APCは、活性型β-カテニン–TCF複合体の形成を制御します。APCは、明確になっている腫瘍抑制因子で、APCタンパク質の喪失または減少につながる生殖細胞系列変異は大腸および直腸のがんに関与する家族性大腸腺腫症(FAP)に関連します *18 。 APCにおける体細胞変異は、肺、乳房、結腸、直腸、および他の器官の悪性腫瘍にも関連します *19,20 。
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK-3)は、2種類のアイソフォーム(αおよびβ)を有する多機能セリン/スレオニンプロテインキナーゼで、グリコーゲン代謝における鍵となる酵素として最初に発見されました。その後、GSK-3は細胞分裂、増殖、運動性、および生存において機能することが示されました。GSK-3は、がん、糖尿病、および特定の神経障害などの数多くの病態に関与しています。Wntシグナル伝達経路において、APCおよびGSK-3βはともに足場タンパク質AXINに動員され、β-カテニンの負の制御因子として必要とされます *20,21 。

TCF/LEFによって制御される標的遺伝子の代表例

がんにおけるWnt経路

Wntシグナル伝達の調節不全

  • 多数のWntリガンドおよび経路-関連タンパク質(i.e., Wntリガンド、DvlおよびFZDタンパク質ならびに他の経路のメディエーター)が存在することから、経路内に機能的冗長性が高い可能性で存在する
  • Wnt/β-カテニンカスケード (およびその他の経路との関連性)は遍在し、成体組織に見られる造血幹細胞および幹細胞を含む、体内の数多くの細胞タイプおよび組織を制御している。
  • Wnt/β-カテニンシグナル伝達の調節不全は経時的に変化し得る:腫瘍形成初期に生じるWnt依存的なイベントは、腫瘍進行が進むのに従い、Wnt標的に対する感受性を欠如させる方法によって変化すると考えられる
  • がんバイオマーカーに関する知識の欠如と、Wnt/β-カテニン阻害の影響を受けると考えられる分子サブタイプに関する理解の欠如が、創薬努力の妨げとなり得る

APC(Adenomatous Polyposis Coli)Rabbit Polyclonal Antibody

Wnt/β-カテニン経路が関与する前臨床実験

Wnt/β-カテニン変異を持つ腫瘍を特異的に標的とする承認済みの治療薬は存在しませんが、このカスケードを標的とする実現可能性について検討するための初期の臨床試験が開始されています。例えば、抗FZD7ヒトモノクローナル抗体のバンチクツマブは、進行性固形腫瘍患者を対象とした化学療法との併用について第I相試験が実施されています *26 。同様に、生物学的Wnt阻害剤̶FZD8-Fc融合タンパク質̶については、承認済みの抗がん治療薬との併用療法による固形腫瘍患者を対象とした、第I相用量漸増試験において安全性および有効性の評価が行われています シグナルをわかりやすく解説 *27,28 。

研究内容

私達の研究室では、分子生物学、生化学や細胞生物学の研究手法を駆使し、細胞内情報伝達機構、特に細胞運命(増殖、分化、生存、死)の決定に最も重要なシグナル伝達システムである、MAPキナーゼ・カスケードの研究を行っています。 MAPキナーゼ・カスケードは、MAPKKK-MAPKK-MAPKという3種類の蛋白質リン酸化酵素(キナーゼ)によって構成されるシグナル伝達モジュールであり、出芽酵母からヒトに至る全ての真核生物に相同な分子が存在する細胞内情報伝達の根幹をなすシステムです。

ERK経路 主に増殖因子によって活性化され、細胞増殖や分化を制御する。ERK経路の上流に位置するRasや増殖因子受容体は癌遺伝子であり、この経路の異常な活性亢進が発癌を招く。
p38およびJNK経路 ストレス応答MAPK経路とも呼ばれる。紫外線や放射線、酸化、熱ショック、高浸透圧などの様々な環境ストレス刺激によって活性化され、ストレスを被った細胞に細胞死(アポトーシス)を誘導する。また、炎症性サイトカインや病原体の感染などによっても活性化され、免疫応答や炎症の制御に中心的な役割を果たしている。

1. 新規ヒト・ストレス応答MAPKKK、MTK1の発見と生理機能の解明

ヒト・ストレス応答MAPキナーゼ経路の活性制御機構を解明するため、まずモデル生物である出芽酵母を用いて研究を開始し、酵母のストレス応答MAPK経路を制御する新しい2つのMAPKKK分子(Ssk2/Ssk22)、および浸透圧ストレス・センサーを同定した(Science, 1995)。

次に、この成果をヒト経路の研究へと発展させ、酵母Ssk2/Ssk22に相同な新規ヒトMAPKKK遺伝子、MTK1のクローニングに成功した。 また実際に、哺乳類細胞を用いてMTK1が、ヒト・ストレス応答MAPキナーゼ(p38およびJNK)経路を特異的に活性化するMAPKKKであることを明らかにした(EMBO J, 1997)。

様々な環境ストレス刺激が、どのようにしてMTK1を活性化するのかを明らかにするため、MTK1の制御ドメインと特異的に結合する分子のスクリーニングを行い、3種類のGADD45関連遺伝子(GADD45α/β/γ)を単離することに成功した。 さらに、これらGADD45関連分子が、様々なストレスやサイトカイン刺激によって転写誘導されるストレス応答遺伝子であり、MTK1と結合してその活性化因子として機能することを見出した。 即ち、ストレスやサイトカイン刺激によって発現誘導されたGADD45関連分子が、MTK1を介してp38およびJNK経路を活性化し、ストレスを被った細胞に死(アポトーシス)を誘導するという、新たなシグナル伝達システムの存在を示した (Cell, 1998; MCB, 2002; MCB, 2007)。

次に、GADD45-MTK1経路の生理機能の解明を推進し、まずこの経路がTGFβのシグナル伝達に関与することを見出した。TGFβは発癌抑制作用を持つサイトカインであり、実際にその下流で作用する転写因子Smad4は膵臓癌や大腸癌で高率に遺伝子変異が認められる癌抑制遺伝子である。私達は、TGFβ刺激によってSmad4依存的に発現誘導されたGADD45βが、MTK1-p38経路を活性化して腫瘍血管新生抑制因子TSP-1の発現を亢進させ、発癌阻止に作用する事を明らかにした。また、実際にSmad4に変異を持つ癌細胞では、TGFβで刺激してもGADD45βが発現しないため、MTK1-p38/JNK経路の活性化やTSP-1の発現は共に消失しており、MTK1の制御異常が発癌に関与することを示した(EMBO J, 2002, Nature Commun, 2013)。

またMTK1遺伝子欠損マウスを作成して、免疫系における機能に関しても解析を進め、GADD45分子によるMTK1-p38経路の活性化が、Th1細胞(ヘルパーT細胞の亜群)からのIFN-γ産生に必須であり、Th1免疫応答(細胞性免疫・遅延型アレルギー)の制御に中心的な役割を果たしていることを明らかにした(EMBO J, 2004)。

さらに最近、酸化ストレス環境下で、MTK1の制御ドメイン内に存在するCys残基が速やかに酸化され、その後、徐々に還元されることで酵素活性が著しく亢進し、その結果、細胞内でp38/JNK経路が強力かつ持続的に活性化して、細胞死や炎症性サイトカインの産生が誘導されることを見出した。即ち、MTK1が、生体内の酸化ストレスを感知するストレス・センサー分子として機能していることを明らかにした(Science Adv, 2020)

2. ストレス応答MAPキナーゼ経路の活性抑制メカニズムと発癌

一方、ストレス応答経路の活性阻害機構に関しても研究を展開し、特にPP2C型セリン/スレオニン脱リン酸化酵素の関与を明らかにしてきた。まず、ストレス応答経路の活性化を阻害する機能を持つヒト遺伝子のスクリーニングを行い、PP2Cαがp38MAPK及びMAPKK (MKK4/6)を脱リン酸化して不活性化し、細胞のストレス応答を負に制御する分子であることを明らかにした(EMBO J, 1998)。

さらに、紫外線などのDNA損傷によって、p53依存的に発現誘導されるPP2C類似ホスファターゼWip1(PPM1D)が、p38やp53を脱リン酸化して、これらの分子の活性を阻害し、DNA損傷後のアポトーシスを抑制する機能を持つことを解明した(EMBO J, 2000)。

3. MAPキナーゼ経路のシグナル特異性決定・維持機構と疾患治療への応用

その結果、全てのMAPKK分子のC末端領域に、対応する上流のMAPKKK分子との特異的結合に必要な、新規ドッキング・サイトが存在することを見出し、DVDサイトと命名した。さらにこのDVDサイトを介した分子間相互作用が、シグナル特異性の決定、維持のみならず、MAPKKKからMAPKKへの効率的なシグナル伝達にも必須であることを明らかにした。

またDVDサイトと相同なアミノ酸配列を持つ人工合成ペプチドを細胞に導入して、MAPKKK-MAPKK分子間の相互作用を競合的に阻害すると、MAPKKの活性化が強く抑制される事を見出した。 即ち、ドッキング・サイトをターゲットとした分子標的薬剤を開発する事で、MAPK経路に対する新たな活性阻害剤の創薬が可能であり、癌や自己免疫疾患の治療へ応用し得ることを示した(Molecular Cell, 2005)。

4. 液-液相分離顆粒(ストレス顆粒)による、ストレス応答経路の活性阻害と抗癌剤抵抗性

「ストレス顆粒」は、低酸素などの特定のストレス刺激によって一過性に形成される細胞質内構造体であり、その本体はmRNA、RNA結合蛋白質、及び40Sリボゾーム等からなる液-液相分離顆粒であることが知られている。しかしながらストレス顆粒形成が細胞のストレス応答に果たす役割は、ほとんど明らかにされていない。

さらに我々は、この様なストレス顆粒形成による細胞死抑制が、固形癌を治療する上で問題となっている「腫瘍内部低酸素環境による癌細胞の抗癌剤抵抗性獲得」の一因となっていることを示した(Nature Cell Biology, 2008)(紹介記事)。

また最近、小胞体ストレスによって誘導されるストレス顆粒の形成が、酸化ストレス環境下では異常に阻害されてしまうこと、またこのことが神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、ポリグルタミン病等)で認められる神経細胞死の一因となることを明らかにした(Nature Commun, 2016)。

5. ERK経路を介した発癌メカニズムの解明と診断・治療薬開発

ERKは、様々な基質分子のリン酸化を介して遺伝子発現を調節することで、細胞増殖の制御と発癌に極めて重要な役割を果たしている。私達は、癌におけるERK経路の制御異常に関して研究を進め、これまでにMEKのSUMO化が、ERKの過剰な活性化を防いで発癌阻止に作用する事、また癌遺伝子Rasが、MEKのSUMO化を阻害してERK経路を強く活性化し、発癌を導く事を明らかにした (Nature Cell Biology, 2011)。

また最近、ERKによってリン酸化される基質分子を、ヒトcDNAライブラリーから網羅的に探索する新たな遺伝子スクリーニング法(酵母3-hybrid法)を開発して、これまで全く報告のない新規ERK基質分子(MCRIP1と命名)を同定することに成功した。さらに、MCRIP1の生理機能の解析を行い、MCRIP1が癌抑制遺伝子E-カドヘリンの発現制御を介して、癌の転移に重要な「上皮間葉転換(EMT)」に重要な役割を果たしていることを見出した。即ち、癌細胞では、ERKの異常な活性化によってMCRIP1が常にリン酸化された状態にあり、その結果、E-カドヘンリンの発現が低下して、癌の浸潤能・転移能が亢進していることを明らかにした(Molecular Cell, 2015)。

さらにMCRIP1遺伝子破壊マウスを作成して発生過程における機能解析も行い、MCRIP1が肺サーファクタント遺伝子(肺胞を膨らんだ状態に保つのに必要な遺伝子)の発現に必要不可欠であり、ノックアウトマウスは生後数時間以内に呼吸不全で死亡することを見出した(Commun Biol, 2019)。

これまで私達は、主にMAPK(ERK/p38/JNK)経路の活性制御機構の研究を推進し、この経路が細胞運命決定や、免疫応答の制御に極めて重要であることを示すと共に、その制御異常が発癌に関与することを明らかにしてきました。さらに最近、臨床検体を用いたゲノム・ワイドの解析により、様々な癌で見出されるMKK4(ストレス応答経路のMAPKK)の機能欠損変異が、発癌プロセスに極めて重要な遺伝子変異(driver mutation)の一つであることや、p38経路の活性化がoncogene addiction(癌遺伝子の不活性化によって誘導される癌細胞特異的なアポトーシス)に最も重要であり、癌遺伝子をターゲットとした分子標的治療において、癌細胞の排除に中心的な役割を果たすシグナル伝達システムであることなどが相次いで報告されています。

私達は、細胞内シグナル伝達機構の基礎研究を通して、疾患の病因・病態を分子レベルで解き明かすと共に、新規治療法の開発に繋がる応用研究を積極的に展開して行きたいと考えています。

東京大学 医科学研究所 分子シグナル制御分野
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データに基づいた経営判断で定期便の営業利益が向上

シグナル導入で欠品を限りなくゼロに

シグナルをわかりやすく解説 --シグナル導入のステップ--

シグナルの運用開始までにはステップを踏みました。

まずは、シグナルに設定するパラメータを業務担当者と検討するところからはじめました。例えば、適切な移動平均の期間設定については、実際の業務と照らし合わせ、施策(キャンペーン)の期間や、発注までの期間、現在データを確認している周期などから探り出し、設定していきました。その他の業務に依存しないパラメータ(例えば、シグナル検出の信頼区間など)は、参考になる基準がなかったので、様々な値を設定し、シグナルの検知量などから判断していきました。

パラメータを設定し実際にシグナルが検知され始めると、次に社内にシグナルの利用方法を周知させていく必要がありました。その際にポイントとなったのが、単に機能を説明するのではなく、業務の一環として説明したことです。機能の説明だけでは、「なるほど」というところで終わってしまうので、閲覧の入り口として既に定着していたストーリーを用いて、現行の業務の流れを表し、それに沿ってどの作業でレポートを参照するのか、どの作業でシグナルを参照するのかという説明を記載しました。これにより、シグナルでのデータ分析・確認がスムーズに実業務へ組み込まれるようになりました。

こういった、しっかりとした事前準備を経たことで無事にシグナルの運用を軌道に乗せることができました。

シングルサインオン(SSO)とは

シングルサインオン(SSO)と通常ログインの比較

不正アクセスの90%は利用者のパスワードの設定・管理の甘さが原因
「不正アクセス行為の発生状況等の公表について」より

管理業務のリソース増大

シングルサインオン(SSO)のメリットとは

利便性の向上

費用対効果計算はこちら

セキュリティリスク削減

管理リソースやコストの削減

シングルサインオン(SSO)の認証方式と仕組み

SAML認証(フェデレーション方式)

「SAML(Security Assertion Markup Language) 認証」とは、GMOトラスト・ログインのような、ID管理と認証を行うIDプロバイダ(IdP)で保証されたユーザー認証情報を利用することで、連携している各種サービスのシングルサインオンが可能になる仕組みです。 サービスごとのID・パスワードの発行・管理が不要なため、セキュリティ向上が図れるうえ、ID管理にかかるユーザーや社内のシステム担当者の業務負担が軽減されるので、利便性向上にもつながります。

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